2019年9月15日

お医者さんも言っている

また記事の転用ですが、ぜひご覧ください。                                        わたしもこの記事の通りだと思います。

そしてこの記事にあるように痛みの原因は筋肉であると思います。                        この記事あるお医者さんは鍼などで対応できるはずだと仰ってますね、医者でありながら鍼などを勧めるのは素晴らしいお医者さんであると思います!

以下転用です(現代ビジネス 9月11日)

名倉氏は、慢性的な痛み・しびれを解消するために昨年6月、頸椎椎間板ヘルニアの手術を受け、術後わずか10日で仕事復帰。手術は成功して経過は良好だったにもかかわらず、「手術の侵襲という普通の生活圏にはないストレス」がもとで、うつ病を発症してしまったのだという。

侵襲とは、簡単に言えば「心身に負担をかけること」。どれほど安全性の高さや低侵襲が売りの手術であっても、「手術とは、大けがや病気を治療するために、人為的にケガをさせること」なので、当然リスクや後遺症がつきまとう。ゆえに手術を受ける場合には、“本当に必要なのか”を十分に検討する必要がある。もちろん名倉氏も、耐えたがたい痛みからの解放と手術のリスクを精査し、迷いに迷い、安全で低侵襲な手術を行える名医を探しまくったに違いないのだが、「本当に必要な手術だったのか」と疑問を発する医師もいる。

「椎間板ヘルニアが、慢性の痛みの原因になることは決してありません」と断言するのは、慢性痛の名医として知られる加茂整形外科医院(石川県)の加茂淳院長だ。20年にわたり、日本全国から大勢の慢性痛患者を受け入れ、治療してきた実績を持つ。患者の多くは、複数の医療機関を渡り歩き、手術や代替医療をやり尽くした末に、ボロボロになった状態でたどり着くのだという。

「名倉さんの手術は不要だったと思います。(慢性痛の原因とされることが多い)椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症は、これらによって、神経根が圧迫を受けているためにその神経支配領域に痛みやしびれが出ると説明されていますが、これは痛みの生理学が未発達の時代の間違った説です。未だにこんな説明をしているのは、あまりにも勉強不足です。

たとえば1995年に国際腰痛学会が出した論文によると、腰痛がまったくない人でもMRIを撮ると76%に椎間板ヘルニアが見つかり、逆にヘルニアがある人でも8割は、まったく痛みを感じていないことが分かっています。神経を圧迫しても痛みやしびれが起きることはありません。つまり、ヘルニアを取っても痛みがなくなることはないのです。手術で改善することがあるのは、麻酔によって、痛みの原因となっている筋肉の攣縮(れんしゅく・痙攣性の収縮)が治まる可能性があるからでしょう。ただし、また攣縮が再発する可能性もあります」(加茂医師)

1995年といえば今から25年近くも前の話だ。そんなにも昔から、「ヘルニアは慢性痛とは関係ない」ことが分かっているにもかかわらず、未だに手術が「何をやっても治らない、頑固な慢性痛の最終手段」のように行われているのはなんとも不思議だ。

名倉氏の件については、同じく慢性痛のスーパードクターとして名高い横浜市立大学付属市民総合医療センター・ペインクリニックの北原雅樹診療教授も首をかしげる。

「(名倉さんについては)私も情報を集めてみましたが、2つの大きな疑問を持ちました。第一に、 手術の適応が明確にあったのか? 頸椎の手術は、いくら侵襲が少ない術式であっても上手くいかなかった場合の影響が大きいので、脊椎専門の外科医の多くも躊躇することが多いです。痛み・しびれという症状に対して責任を持っている病変に対応した神経所見(痛みやしびれではなく、麻痺や運動障害など)があることが極めて重要でしょう。

頸椎椎間板ヘルニアで手術が適応となるのは、痛みやしびれではなく、四肢の麻痺や運動障害がある場合です。多くの方が痛みやしびれで医師を受診するのは事実です。しかし、プロならば、特に初期で影響が小さい場合には患者さん自身も気づいていないような感覚の異常や麻痺、運動障害などの有無を丁寧に探っていく必要があります。

第二に、合併症はなかったのか? 手術の侵襲のせいでうつ症状を来したというのは本当なのでしょうか。私の患者さんには、うつ症状などがもともとあり、『身体化』(身体的症状が出ること)として一見、頸椎からと思われる症状が出ていたという方が少なくありません。身体化は様々な心理社会的要因で起こりえます。うつ症状としてはもちろんですが、一見しただけでは医師でもよくわからない(時には専門の精神科医や心療内科医でも難しい)、発達障害、軽度の精神発達遅延、軽度認知障害などを基礎とした適応障害にも起こります。

そうした患者さんたちは、私のところへ来る前に名倉さんのように手術を受け、『頸椎の“病巣”を“治した”のによくならない。執刀医は、手術は上手くいってヘルニアはきれいに取れた。まだ痛むとしたら、それは手術の侵襲か、あなたの心の問題だろう、と相手にしてくれない』と言うのです。もともとのうつ症状が前面に出てきてしまう場合もありますが、リスクを取ったのに症状が軽快しないことへの自責感、将来への不安、医療者の心無い言葉、などからうつを発症する場合もあります。

慢性痛は急性痛と違い、複雑な要因が絡み合って起きてきます。単純に、出っ張ったヘルニアを切除して、神経を圧迫から解放すれば治る、というものではありません。
整形外科の先生方は、やはり切ることが好きなので外科系を選んだので、心理・社会面のことに気を回す方は、あまり多くはありません」

北原医師はさらに、かつては数週間の入院を要した大手術しかなかったところに、日帰りでもできてしまう低侵襲の手術が普及してきたことも問題視している。

「手術の侵襲性が低くなると良い面はもちろん多々ありますが、悪い面も出てきます。私が危惧しているのは、手術を決定する閾値(いきち:境目となる値)が低くなることです。すなわち、いろいろな意味で、以前は手術対象とならなかった人にまで手術を行うようになっている。

手術が本当に必要だったのに、今まではあきらめてきた、そういう人にもできるようになった、というのなら良いのですが、それだけではない。症状がそれほどでもなく、手術でよくなるかわからない、とか、他の疾患が合併しているから、大変な手術よりもまずそちらを先に治療したほうが、とかいう患者さんが、簡単だから、“とりあえず”手術をしてみよう、となってしまう可能性もあるのが問題なのです」

では、名倉氏の痛み・しびれの本当の原因はなんだったのか。

無論、本人を診察してみなければ断言はできないが、一番考えられるのは「筋筋膜性疼痛症候群」だと前出の加茂医師は言う。

「簡単にいうと筋痛症ですが慢性化しやすく、範囲が広がった状態です。名倉さんの場合は、僧帽筋、斜角筋、頭板状筋、肩甲挙筋、胸鎖乳突筋などの筋肉の痛みだったのではないでしょうか。筋肉の緊張、脳の痛覚過敏が治ればいいのですから、いろんな治療に反応するので、トリガーポイント注射、鍼、マッサージなど簡単な治療で対処できると思われます(※1)。手術で治ることはあるでしょうが、暗示的なプラセボ効果でしょう。長続きしないことが多く、痛みが再発することが多いです。手術は麻酔下のケガですから、一層痛みが複雑なものになる可能性があります」

筋筋膜性疼痛症候群は、聞いたことがないという人も多いかもしれないが、以前日経メディカルに掲載された『病名に「痛」がついた疾患で、受診者が最も多いのは? 』という記事で、「筋肉痛」「神経痛」を抑えて第6位にランクインしたこともある。知名度は低くとも患者数は多い、病院へ行かない患者まで含めれば、実にありふれた疾患といえる。

事実、前出の北原医師のもとへ「難治性の慢性痛」で紹介されてくる患者の8割は、筋筋膜性疼痛症候群との合併症が占めており、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、坐骨神経痛等の聞きなれた病気と誤診され、一通りの治療(通常の鎮痛薬や神経ブロック療法など)をして良くならないと、「原因不明」ならまだしも、「精神的なもの」「大げさ」「詐病の疑い」などの修飾語とともに、医療者から見放されてしまった患者も多いという。

とはいえ、読者の多くは「日本の優秀な整形外科医が、そんな不勉強なはずがない。まして、不必要な手術が許されるはずがない」と思うだろう。しかし残念ながら、日本の慢性痛医療が、他の国々に比べて著しく遅れていることは間違いない。なぜなら、日本の大学の医学部では、痛みの専門教育はなされていないからだ。本稿で取材した加茂医師は独学で、北原医師はアメリカに留学して学んだという。

現在、日本で、慢性痛医療を牽引している数少ない医師たちは皆、そうやって慢性痛について学んだ方ばかりで、後進の育成が思うように進まない今、「このままだとあと10年程度で集学的(単純に切って治す等ではなく、さまざまな方法を組み合わせて治療する、世界の主流的なやり方)痛み診療の知識や技術の継承は途絶えてしまう可能性が高い」と危機意識を募らせる医師もいる。

ただ、少しずつだが、変化もみられる。

北原医師は、厚労省や神奈川県から補助金をもらい、医療従事者から市民まで幅広い層に向けた勉強会を開催しており、整形外科医の参加者も徐々にだが増えているという。さらに今後は、慢性痛に関する正しい知識を広めるWEBサイトの制作・運営、動画の配信、横浜市大を核にした慢性痛医療の担い手の育成プロジェクト等、精力的な活動を展開する計画を立てている。人手も資金も圧倒的に不足しているため、なかなか勢いがつかないことが現代の切実な悩みだ。

また、三重県鈴鹿市の鈴鹿医療科学大では8月21日から23日までの3日間で、三重大との合同体験型実習が行われ、両大学の2年生を中心とした約60人が医療連携を通じて疼痛治療の基礎を学んだ。

両大学は2017年度から合同で、文科省の「課題解決型高度医療人材プログラム」による「地域総括役社会のための慢性疼痛医療者育成事業」に取り組んでいる。これは5年間の事業で「慢性の痛み」という課題に向け、薬や手術だけでなく、理学療法や心理的な問題を含め、総合的なチーム医療で解決にあたるための医療従事者を育成するのが狙いだ。

同事業推進プロジェクトリーダーの1人、三重大学大学院医学系研究科麻酔集中治療学の丸山一男教授(62)は「学生時代から痛みの要因を複合的に理解することが、高度な医療従事者を育てることにつながる」と話している。(2019年8月22日 伊勢新聞参照)

明るい話題はゼロではないが、基本的には、はなはだお寒い状況にある日本の慢性痛医療。名倉氏のニュースをきっかけに、me-too 、KuTooならぬ、YouToo/KeyTooi(あなたも腰痛、私も頸椎がきつーい)的な運動が起きることを期待したい。

以上です。

もちろん、絶対に手術が不必要なわけではありません。                             しかし、手術は最後の最後の手段で良いのではないかと思います。